一ノ瀬正樹、早野龍五、中川恵一編
福島民報社
定価 2,160円(本体2,000円+税)
B5判 192ページ
C0030 ISBN978-4-904834-39-8
■福島を考えることは自分自身を考えること
「被災動物は何を語るか―原発事故後の牛、犬、猫たち」
2017年3月18日、東京大学本郷キャンパスで催されたシンポジウム「あのときの、あれからの福島」をもとに、参加者が寄稿し書籍化されました。
編者は東京大学大学院哲学研究室教授・一ノ瀬正樹氏、東京大学物理学名誉教授・早野龍五氏、東京大学医学部放射線医学教室准教授・放射線治療部門長・中川恵一氏。
眞並も「被災動物は何を語るか―原発事故後の牛、犬、猫たち」と題する一文を寄稿し、質疑応答も掲載されています。被曝による健康問題や母子保健のテーマもあり、ぜひご一読ください。
―「まえがき」より―
そうなのです、福島の問題に対して発する言葉や見方は、単に福島に関わるだけではないのです。それを発する、それを心に抱く「あなた自身」を形成していく要素でもあるのです。戦後最悪とも言える災害の東日本大震災、そして私たちが直面した大きな規模の原発事故、それは一地方である「福島」の問題ではありません。むしろ、福島問題は、放射線飛散量の物理的・生理的影響に関するデータや事実がほぼ出尽くしたいまでは、日本人全体の道徳的品性を問う問題へと変容しているとさえ言ってもよいでしょう。
事実を率直に受け入れ、放射線や被害行動についての知見を多少なりとも学び、福島に対する態度は自分自身のことなんだということ、道徳的な問題なんだということ、それをぜひにも確認していただきたいと思います。そうすることが今度は、被災者へと再び投げ返されて、希望や微笑みをもたらしていくのではないでしょうか。それこそが、福島のひいては日本の復興へと事態が向かっていく道標です。そう、いまや、「福島はあなた自身」、その気づきに至るべきときなのです。
■目 次
- まえがき
- 導入
- 福島問題は私たち自身の内在的問題である 一ノ瀬正樹
- ●第一部 あのときの福島、そして避難弱者
- あの時 福島原発付近の介護施設で何があったのか 相川祐里奈
- 避難を余儀なくされた介護施設 桜井勝延
- ◎シンポジウムの質疑応答から…原発事故の影響
- ●第二部 福島に暮らす、そして健康問題
- 福島で 暮らす・暮らせない ということ 安東量子
- 測って、伝えて、袋小路。─どこで掛け違ったのだろう─ 早野龍五
- 避難行動と健康(一)~放射線の人体影響~ 中川恵一
- ◎シンポジウムの質疑応答から…除染についての考え方
- ●第三部 福島の子ども、そして育児/甲状腺がん
- 震災後の母子保健:エビデンスをつくり、伝え、使う重なり 後藤あや
- クライシスコミュニケーション~リスクコミュニケーションの経験から 高村 昇
- 避難行動と健康(二)~福島での小児甲状腺がん~ 中川恵一
- ◎シンポジウムの質疑応答から…過剰診断とは
- ●第四部 被災動物、そして動物倫理
- 被災動物は何を語るか~原発事故後の牛、犬、猫たち~ 眞並恭介
- 被災動物、そして動物倫理の暗闇 一ノ瀬正樹
- ◎シンポジウムの質疑応答から…被災動物と向き合う
- ◎シンポジウムの質疑応答から…全体総括・「福島はあなた自身」とは
- あとがき