『2047年の就職・転職情報』序文
今は昔。50年後の社会を歩き、今を振り返ってみれば……

「残業代ゼロ」を目指すための労働基準法改正について、今年の通常国会では見送るべきだとの声が与党内で強まっているそうだ。安倍内閣が推し進めようとしている「ホワイトカラー・エグゼンプション」に、労働側が猛反対し、「サラリーマンを敵に回しては、夏の参院選は戦えない」との懸念からだという。

1日原則8時間の労働時間を見直し、一定年収以上のホワイトカラーを対象に規制を除外する案をめぐって、労使が対立している構図だ。導入に積極的な経済界と反対の労働界という対立は、非常に古典的な図式で、どう考えてよいのか分からないような痛ましい事件が多発している社会にあって、なんだか懐かしい気さえする。

これは安倍政権の成長戦略の一翼を担っているという事情もあり、自民、公明両党は労働法制見直しの議論に入るという。残業代ゼロのほかに、パートの正社員化を促すパート労働法改正などの課題もある。

「終身雇用」は死語になりつつあるが、確固とした雇用形態は確立されていない。さらに付け加えるなら、フリーターやニートを、個人の生き方や社会の問題とする前に、労働力としてどうとらえるのか。

小社では10年前、『2047年の就職・転職情報』というヘンな(メチャおもろい)本を出した。1997年の時点で、50年後の日本を描いた未来社会絵巻と銘打ったブラックユーモア風レポート集だ。超氷河期といわれた就職難の世相を反映し、仕事に関する話を中心にまとめた。就職や転職に悩む人たちに、「いつまでもあると思うな会社・役所!」というメッセージを込めた、半世紀先のバーチャルリアリティ(仮想現実)体験本だ。

発行からすでに10年がたった。描かれているのはまだ40年先の社会だが、「生産力低下に悩む精子工場」をはじめ、予想された状況に一歩ずつ近づきつつある。

就職・転職を中心とした内容のベースには、マルクスの『共産党宣言』があった。20世紀を先導し、希望であり恐怖であったマルクスレーニン主義を標榜する国家は、すでに消滅または変質した。

私は高校時代から大学にかけて、マルクス主義や実存主義を学び議論した最後の世代に属する。2047年は、第二次世界大戦後100年余り、『共産党宣言』から200年にあたる。『2047年の就職・転職情報』は、1997年から50年先、そして50年前の100年間を視野に入れて編集した。「序文」と「あとがき」で、読む人の少ない古典となった『共産党宣言』をパロディ化した。

「日本に幽霊が出る――『ショクサガシ』という幽霊である。ふるい日本のすべての企業は、この幽霊を退治しようとして内密の協定を結んでいる。大企業と中小企業、老舗とベンチャー、メーカーとサービス業……」
そして、あとがきを「万国のショクサガシ団結せよ!」という「ショクサガシ宣言」で結んだ。

会社や役所も、いつまでもあるとは限らない。国家も個人も、地球でさえも永遠ではない。それなら、愛や魂は……。
そんな話は本書に譲るとして、とりあえず序文を掲載する。PDFによる未来の絵巻物風デジタル草紙を閲覧していただきたい。