被曝の大地に生きる

電車内で福島・被災動物写真展
(2015年3月21日 掲載)

東日本大震災から4年経った2015年3月11日から1週間、京都市内を走る嵐電の車内に、被災した福島の動物が乗っていた。残念ながら、乗客と一緒に電車の中で揺れていたのは本物の牛や猫ではなく、写真であったが――。

京都・嵐電(嵐山本線・北野線)の「復興応援電車・キミマツサクラ号」での写真展は、昨年から始まった。東北復興のシンボルとして、福島県・三春滝桜の子孫の苗木を嵐山に移植したことがきっかけである。

2回目の今年は「被曝の大地に生きる」と題して、写真と取材手記(コピー)を私が担当した。私はこの数年間、福島に通って避難区域の動物(家畜、ペット、野生動物)の取材を続けてきた。それを知っていた友人で仕事仲間でもあるデザイナーの広瀬之宏さんが、声をかけてくれたのだ。

ちょうど新刊の『牛と土――福島、3.11その後。』が出たばかりで、文章では伝えにくい牛の姿、被曝地に生きる牛のイメージを少しでも知っていただければと、私は渡部典一さんと大谷久美子さんにも頼んで写真を提供してもらった。渡部さんは本に登場する双子の兄弟牛の飼い主で、帰還困難区域の牧場で今も牛を飼いつづけている。大谷さんは、安楽死処分に同意せずに牛を生かそうと頑張っている農家を支援する研究者らで作る「一般社団法人 原発事故被災動物と環境研究会」の事務局・コーディネーターを務めている。

キミマツサクラという呼び名は、自らも福島で被災したGReeeeNのリーダーHIDEさんが名付けたもの。3月11日の「復興応援電車・写真展」のオープン記念式典には、GReeeeNのファンの方が全国から集まってこられた。14時46分、電車の警笛合図とともに黙祷。その後、キミマツサクラ号は嵐山駅を出発し、四条大宮駅へ向かった。

この走行電車内ギャラリーのイベントは、1週間の広告収入を度外視して協力された京福電気鉄道のスタッフをはじめ、震災体験を風化させたくないというボランティアの参加で実現した。すでに被災地から離れると原発事故の記憶も薄れつつあり、国や電力会社は原発再稼働に向かっているが、事故の災禍はいつ終わるともしれず、今も進行中だ。当サイトに掲載した写真を見て何かを感じていただけたら、被災した動物が乗った電車はきっと心のどこかで走りつづけることだろう。